三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『よろず春夏冬中』〜デカフェ問題〜

 スタバによく通っていた頃、私は必ずディカフェ(コーヒーからカフェインを抜いたもの)をたのんでいた。

 あるとき、私がいつものようにディカフェを頼むと、アルバイトを始めたばかりの少年が「デカフェですね、かしこまりました」と言ってきた。デカフェ

 後日、スタバの黒エプロンの女の子と喫茶店で話しているときに、

「カフェイン抜いたやつって『ディカフェ』なの? それとも『デカフェ』なの?」と聞いてみた。

 黒エプロンの女の子は「普通の店ではデカフェだけど、スタバではディカフェで統一してるんだよ。今度、注意しなくっちゃ」といっていた。家に帰りスタバのメニューをみると、たしかにディカフェと書いてある。「デカフェ」ではなく「ディカフェ」である。

 昨日、本当に久しぶりに近所のスタバに行ってみた。早朝のレジには、まだ10代に見える男の店員(スタバで働いていることは好きだけど、スタバ自体にはさして興味がなさそうに見える少年)が一人だけいた。

私は「ディカフェをください」と彼にいう。

彼は「デカフェですね」と答える。

デカフェ?  と思いながらも、今のスタバはデカフェになったのかもしれない、という謎の可能性で自分を納得させる。 

 10分後、男の子がコーヒーを持ってきて(ディカフェは出来上がるまで10分ほどかかる)、

 「デカフェになります」

 と言ってきた。

 それはデカフェではないし、君がどんなに「デカフェになります」と宣言しても、君はデカフェにはなれないんだよ、と皮肉が頭をよぎったとき、何故だか私は自分がひどく歳をとったように感じた。

 数年前に、『よろず春夏冬中(あきないちゅう)』というという小説のことを、『よろずしゅんかしゅうとう』と読んでいる女の子に出会ったときは、かわいいと思ったのにな。

 そんなことを思いながら飲むディカフェは、なんだかあんまり美味しくなかった。私の心の中が不味かったからだろうと思う←上手い。

 

『よろず春夏冬中長野まゆみ/著