三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『かがみの孤城』〜こころの鍵をかけるタイミング〜

 「たかしくんにどうしても直して欲しいところがあるんだけど」

 人に意見をしたことがない、ましてや改善をもとめる姿など見たことのない友人Mがある時こう切り出した。私のアパートに遊びにきていたMが帰ろうとした時のことである。

 Mは一瞬、躊躇したあと、こう切り出した。

「僕が帰った瞬間に鍵をかけてチェーンをするのはやめてほしいんだ。なんだかとても拒絶させたような気になる。ただの習慣だとは分かっているんだけど」

 それ以来、逆の立場になった時に、相手がドアの鍵を締める速さが気になるようになった。

 なるほど確かに家を出た瞬間に鍵が閉まる音がするとなんとなく嫌な感じがする。色々な家で、何度も音を聞いているうちにある発見があった。

 鍵を閉められる早さは、相手との仲の良さに反比例する。女の子は特に。

 仲の良い女の子になればなるほど、私がドアから出てから鍵をかけるタイミングが遅い。私は相手からの好意のバロメーターとして、この「鍵のタイミング」を気をつけるようになった。

 先日、とある女の子の家に遊びにいった。家にあがる=もうOKなどと、前時代的なことは考えていない。もう2018年で、携帯電話のセキュリティは顔認証をする時代なのだ。

 とはいえ、女の子の家で映画を3本観た私は、正直言って「行ける」と思った。好きでもない男と、映画を一気に3本も観るだろうか!(しかも女の子から誘ってきたのだ)。

 数時間後、私はおいとますることにした。

 ひとまず今日は帰ろう。でも、ちょっとガードが固そうな女の子のだと思っていたけれど、もしかしたらあんなことやこんなことができるかもしれない。へへへ。

 そんなことを考えながら外に出た瞬間、鍵が掛かりチェーンもかけられた。

 たかが鍵のタイミングだと思う人もいるだろうが、私の鍵占いは今のところ百発百中なのだ! 残念ながらね。

 私は真っ暗になった夜道をロードバイクにまたがり疾走する。耳の奥に、あの「ガチャ」という音がリフレインして離れないのだった。

 そうそう、鍵のといえば辻村深月の『かがみの孤城』だ。びっくりするほどざっくりいうと、鍵を探す話です。本屋大賞にノミネートされてますよ。おすすめです。

 

『かがみの孤城』辻村深月/著