三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『スロウハイツの神様』~聞きたくなかったあのセリフ~

「若い人」という言葉を使うのは年を取った証だ、と何かの本で読んだ。たしかに三十路になってから、若い人という言葉を使うようになったなぁと思っていたら、知らない女の子からラインが来た。

 はて、誰だ? と思っていたら、一呼吸おいて他部署の新人の女の子だと気づく。高校卒業後にすぐ入社した女の子だから、まだ18歳だ。三十路と十八歳。犯罪的な匂いがする。

 ラインのIDは教えていたかったが、電話番号か何かで見つけたようで、つまりは突然ラインが来たのだ。

 私のことをかっこいいと言っていたのを人づてに聞いていたので(いいニュースを教えてくれた人ありがとう)、正直嬉しさがあり、2回くらいやりとりをした。が、そのあと連絡がこなくなった。数日後、またラインが来るも、数回やりとりをするとまた来なくなり、今度は3日後に来た。

 断っておくと、私はがっついていない。質問も特にしていないし、返信がおそろしく早いわけではない。私は年上好きなのだ。だから女の子が私を気持ち悪いと思っている線は消させてくれ。その数日のなかで、女の子が私に好意らしきものを持っていると人づてに聞いた。私の結論はこうだ。

 女の子は私に対して揺さぶりをかけている。

 私は「この子、18歳の小娘さんなのに揺さぶりをかけているよ」と思ったと同時に、一回りも下の女の子はどう努力しても妹にしか思えないことに気づく。私は大人の余裕を出しながら軽やかに好意をかわし、間もなく転職した。1年程前の話だ。

 31歳になった先日、前職の後輩と話す機会があった。私はふとその女の子のことが気になり、後輩に聞いてみた。

「ねぇ、Sちゃんは元気?」

「ああ元気ですよ。でもなんか欲求不満みたいで『誰でもいいから私を抱いて』といつも言っています」

 ――うまく言葉にできないけれど、誰に抱かれようが関係ないんけれど、なんとなく、いやとてつもなくその言葉は聞きたくなかったな。

 それくらい聞きたくない言葉を言われるのが、小説『スロウハイツの神様』だ。この小説は、人に指摘されたら胸をえぐられるような言葉がポンポン飛び交う。でもとってもおもしろい。作者である辻村深月さんの講談社ノベルスは、読んだほうがいい順番がある。今作は4~5番目だ。詳しくは「辻村深月 講談社ノベルズ 順番」でググってくれ。より一層、小説を楽しめるはずだ。

 

スロウハイツの神様辻村深月/著