三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『雲は答えなかった』~第7回 スタパで恋は生まれるのか?~

 6度ほど恋らしきものを経験してきた、スタバに通っていた5年間で。(すべて失敗に終わったけども)。

 実際にアクションを起こしたことはなかったが、7度目に行動に移した。

 その女の子はスタバの店員さんで、私が初めて足を運んだ5年前から働いていた。明るさよりも細やかな気配りが光る女の子だった。

 たとえば、私は当時ディカフェ(作るのに10分くらいかかる)を頼んでいたのだが、店が混んでいたので、何も言わず普通のコーヒーにしたことあった。

 女の子は私に渡したコップに、こっそり「お気遣いありがとうございます」と書いてくれていた。素敵。

 しかし、スタバの店員さんの仕事上の愛想の良さは計り知れない。5年も通っていればそれくらいわかる。気があると勘違いしてはいけない。

 でもね、「これは」と思うことがほかにもあった。私は17歳からなぜか指輪を左手の薬指にしている。ただのファッションとして。で、ある日、その女の子から急に、

「ご結婚されているんですか?」と聞かれた。ただのファッションなことを伝え、うわっ、意味もなく左手薬指につけてること絶対引かれたよと思っていたら、「そうなんですね。よかった」といった。

 彼女は間違いなく「よかった」と言った。

 そして確信できる出来事がついに来た。スタバに行きはじめて5年目、女の子が運んでくれたディカフェにメモが挟まっていた。

「お客様が来られて5年くらいになると思います。私も同じくらいに入ったからよく覚えています。今度、お名前を教えてください」。もうハートマークが見えたよ。

 これは動くしかないでしょう。私は彼女をデートに誘った。スタバに行けなくなるかもしれないというリスクを冒してでも誘った方がいい。だって、5年前からいいなとおもっていたし、もうきっと大丈夫だもの。 

 当然デートのOKをもらい、公園でピクニックがしたいという彼女をつれて公園に行き、キャッキャウフフしてカフェに行った。

 ややあって、私はやんわりと気持ちを伝える。彼女は「ありがとうございます」と言い、

「でも、私、お慕い申し上げている人がいるんです」と言った。

“お慕い申し上げている人がいる”。初めての振られ方だったので、一言一句覚えている。間違いなく彼女はそう言った。

 というか、「結婚していないです→よかった」「手紙をくれる→名前を教えてほしいと書いてある」というのは、あくまで客に対しての対応だったというのか――。

もしそれが客に対してのやさしさの範疇だというのなら、あぁ神様、それはあんまりだと思うのです。

 私はその時に読んでいた本を今でも覚えている。ルポルタージュ『雲は答えなかった』だ。

 カフェを出て、ピクニック日和の空を見上げても、もう雲は答えなかった。

 

『雲は答えなかった』是枝裕和/著