三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『格闘する者に○』~プラトニックラブは成立するのか~

 なぜそんなことをしようと思ったのかは忘れたが、その日私はすれ違う男を見て「勝っている」「負けている」と外見チェックをしていた。

 多分、相当落ち込んでいた日に、(無意識に)さらに落ち込みたいがためにそういう不毛な遊びを始めたのだと思う。

 落ち込んでいる日は、普段より自分に自信がなくなるのは一般的だろう。

 勝ち、負け、勝ち、負け、負け、負け‥‥‥。

 はぁ、と一人で勝手に落ち込んでため息をついていたら、一緒に歩いていた女の子が「どうしたの?」と聞いてきた。

 その女の子とは何でも話せる友達だったので、私は正直に「負けが込んでいる」と言った。

 女の子は笑うこともなく、私の方を見るわけでもなく、前を見ながらこう言った。

「勝ってる負けているじゃない、たった一人の人から好きになってもらえればいいのよ」

 なんてこった。とんだ名言だ。灯台下暗しだ。幸せの青い鳥だ! 私の運命の相手は隣にいたのだ。なぜそのことに気が付かなかったのか。

 たった一人の人から好きになってもらえばいい=それは私なのよ、でしょうよ。

 ただまぁ、ままならないことが世の常だ。

 その女の子は小説『格闘するものに○(まる)』の主人公みたく、いわゆる“枯れ専”だった、その日の夜は80歳のバイオリン好きのおじいちゃんとデートらしかった(ちなみに翌週は別のおじいちゃんが経営している素敵な楽器店に行くらしかった)。そして彼女はおみだらが嫌いなのだ。

 それはもっとも致命的で、解決しがたい問題だった。

 私はキャッキャウフフだけではなくて、キャッキャウフフエへへまでしたいのだ。

 ――私の運命の人は隣にいたけれど、彼女にとっての運命の人は私ではないのか。しかし、おみだらを差し引いても魅力的な人だ……いやでもおもだらが……もじもじ。

 と、数か月もじもじしていたら、いつの間にか彼女は別の男(若い)と付き合い始めていた。マジか。

 2人の関係性について詮索するつもりはないし、その男の頑張りは素直にすごいと思う。

 やっぱり、格闘する者には○(まる)が付くのだなぁ、と上手いオチでしめて私のもじもじを帳消しにしたい。

 

 

『格闘するものに○』三浦しをん/著