三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『ゆりキャン』~男のモテる香水の付け方講座~

 16歳の頃おなかに香水を付けていた。

 たしかグッチの「エンヴィ」だったと思う。タバコの臭いを隠すためにどぎつい香水を付けている同級生を見て「ダサいなぁ」と漠然と思っていたときに、テレビで「男性はおなかに香水をつけてから首に付けるとほのかに香りますよ」と言っていた。

 その言葉で、「おなかに香水=モテる」になった。どのみちタバコ吸っていなかったしね。

 ただ、自転車通学の私は毎日10キロの道のりを汗だくで登校しなければいけない。

 おなかに付けていい匂いがするのは、空調が完璧に整ったオフィスで、女の子とかなり近くで仕事の打ち合わせをする奴だけだ。汗だくで登校した私からは、もはや汗の臭いしかしなかった。

 だから結局、香水を付けていた1年の間に誰かに香水を気づいてもらったことは一度もない。高校3年生になると、香水よりも石鹸の香りがモテるという考えに変わり付けなくなった。

数年後、大学生になった私は後輩の女の子と話をしていた。

「たかしさん香水つけないんですね」と女の子。

「うん、みかちゃんも付けてないよね?」と私。

すると女の子は鼻を少しふくらまして、

「はい。私、彼氏の体臭が大好きだから少しでも匂いを残しておきたいんです」

 と言った。

 やばい、この子変態だ。好きになってしまいそうだ。

 だってその言葉、ちょいエロ漫画『ゆりキャン』の主人公の名言とほぼ一緒なんだもん。

『ゆりキャン』はゆりじゃないけど、女の子からモテモテの女性が主人公だ。作中で彼女に「香水を付けないんですか?」と言った女の子に対し、彼女は不敵に笑いこう言い放った。

「抱いてきた女の子の残り香が私の香水よ」

……かっこいい、超かっこいい。それ言ってみたい。

 しかし、と現在私が気になっている女の子のことを考える。彼女は香水を付けている男が好きだという。しかも、10年以上前にテレビで見た「男はおなかに香水=モテる」という眉唾の情報が、この前テレビの次回予告で流れていた。

 香水、買ってしまおうかなぁ。

 私は右腕をさすりながら、

 少なくてもこの間俺の上半身を愛でるように慈しむように触りまくってきた男(後輩)の臭いだけはしみ込んでいてほしくないなぁと思った。

 

『ゆりキャン』マンガ