三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『本日は大安なり』~お互い独身だったら結婚しようよ~

 ○○歳までにお互い独身だったら結婚しよ、というのは鉄板である。

 私もいままで何人かの女の子とそういう話になったことがある。ただ、(私の周りの女の子だけかもしれないが)そう言ってきた子は約束の歳になる前に必ず結婚してしまうのだ。

 悔しい。私は未だに一人身だというのに。三十路になった今こそ、この言葉を発するべきではないのか。

 私は人生で初めて、女の子のそのセリフを言うことにした。

 ○○歳になっても一人だったら結婚しよう、○○歳になっても一人だったら結婚しよう……。呪文のように唱えながら、時々食事をする女の子との待ち合わせ場所に向かう。

 約束の5分前に目的地に到着した私は、「結婚」という言葉を頭の中でつぶやき続けた。そして女の子の登場である。あのセリフを言ってやるぞ!

 カフェの席に座った瞬間、私がそのセリフを言う前に女の子が口を開いた。

「聞いてほしい話があるんだけどさぁ、最近付き合ってもいない男の人から『結婚しよう』って言われたのよね。それも突然。一人で何を盛り上がっているかはわからないけど、ちょっと怖くない?」

 ……。

「……うん、怖いね、それは本当に怖いね」

 と返し、頭の中で「色んな意味でね」とカッコを付け加えた。

 その男は確かに怖いけれど、あなたの目の前にいる男も相当怖いぞ。そしてタイミングが良すぎるだろう。

 ――女の子の“勘”は時々おそろしいほど冴えわたる。

 待ち合わせ場所で私を見たときに、女の子は「こいつ、なんかあるな」と思ったのだ。あるいは「こいつ、あたしを抱きにかかってるな」と思ったのかもしれない。でないと、こんなタイミングで結婚の話が出るわけがない。

 女の子の話は辻村深月の小説『本日は大安なり』に移る。確かにその子は辻村さんが好きだが、このタイミングで結婚式の短編集の話になるとはな。「結婚」の話はもうするまい。

 スマホを見て、本日が仏滅だと知る。私は「そんなオチはいらんがな」と思いながら、彼女とその素晴らしき小説について話す。

 

本日は大安なり辻村深月/著 2012年ドラマ化