三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『そうか、もう君はいないのか』〜雑誌に載ってモテる方法〜

 紙面デビューが決まった。数十万部発行される媒体にである。

 人物スナップの人員が足りなかったから会社の人にお願いされただけなのだが、デビューはデビューだ。私はそのコーナーに載る3人の1人に選ばれた。

 世の中、全ての人に愛される人がいないのと同様、全ての人に嫌われる人もいない。そして人の目に留まる数が多いほど、好かれる可能性は広がる。

 数十万の女の子が私を見るということは、その中に一人くらい(あわよくば2、3人)、私にときめく人がいてもおかしくはないのだ。

 私が載るのは若い女の子が見るコーナー。大人の魅力を見せつけてやるぜ。超絶イケメン風の顔をしながら、スナップ撮影に臨んだ。

 そして数日前、発行予定の紙面が事前に会社に届いた。私は先輩から奪い取るように雑誌を手に取る。ちゃんと私が載っている。そして異変に気付く。

 そのページに載っているのは3人。他の2人は顔のアップ、私だけ引きが強い全身画像……。

 これはあれか? 他の2人は22歳で私が三十路だからか? 本当は全員20前半のモデルにしたかったのに、足りずに急遽三十路の私をチョイスしたからか?

 ――間が悪いのか、その前日に友人から学生時代にみんなで撮った写真が送られてきた。

 今より10歳近く若い自分自身を見ながら思わずつぶやく「そうか、もう君はいないのか」

『そうか、もう君はいないのか』は、作家・城山三郎さんが亡くなったあとに出された手記だ。

 女性に「おまえ」と呼ぶと嫌がる人は多いし、私も呼ぶことはないけれど、

“数十億の中で ただ一人「おい」と 呼べるおまえ”という文章は好きだな。35億。

 

『そうか、もう君はいないのか』城山三郎/著