三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

可愛いは作れる~『きりこについて』~

「可愛いは作れる」レベルで「ハゲは隠せる」。大丈夫、そう信じて生きてきた。

 たとえ剃りこみが強くても、てっぺんから髪の毛を伸ばしていけばM字は隠せる。

 髪の毛の薄さが気になりだしてから、半年ほど髪の毛を伸ばしていた。その間、美容室には行っていない。襟足やサイドだけ自分で切っていた。

 美容室に行かなかった理由は二つある。ひとつは、不潔さが出やすい伸びきった襟足やサイドを自分で切れる技量があること、そしてもうひとつはハゲが恥ずかしくて美容室に行けなかったからだ。

 ただ、さすがに半年も美容室に行かないと色々とあらは出てくる。私はハゲの相談もかね今の自分に合った――というかハゲを隠せる――髪型を求め美容室に向かった。

 5000円もの大金を支払い(今までで一番高い美容室でも3000円だった)、腕利きを指名し、ハゲの相談をしてみる。

 30代後半とおぼしき腕利きは、私の頭を見て一言、

「いや、全然ハゲてないですよ」

 と言った。リップサービスかもしれないと思いながらも、ニヤニヤが止まらない。やったぜ、俺はハゲていないんだ。髪の毛を切ってもらっているあいだ中、私は「全然ハゲていないですよ」を脳内再生していた。

 腕利きの技は見事なもので、私の髪はなんだかいい感じになった。というか、ごくごく控えめに言って、超絶かっこよくなった。

f:id:shikataeunita:20170516193251p:plain

 ありがてぇ、ありがてぇ。私は腕利きに腰から丁寧に頭を下げ、感謝を伝えた。

 腕利きが言う。

「お客さん僕と頭の形が一緒だから切りやすかったです。そしてやっぱりハゲてないですよ。僕も剃りこみありますけどこの程度ですし」

 そう言って腕利きが髪の毛をアップにする。

f:id:shikataeunita:20170516193413p:plain

ハゲとるやないかい。

 ――腕利きは確かに私を超絶かっこよくしてくれた。そして腕利きに比べると私は全くハゲていない。

 しかし、この腕利きのハゲの基準は信用ならない。ひとまず、私のハゲは保留にしよう。だが腕利きよ、そなたはハゲておるぞ。

 腕利きみたく、自分を客観視するのは難しい。小説『きりこについて』の主人公きりこも、自分がたいへん美しくないと自覚するのにとても時間がかかった。が、大事なのはいかに楽しく生きられるかということ。そこに美醜は関係ないのだろう。と、ワックスでいい感じのマッド感を出しながら私は思う。

 

『きりこについて』西加奈子/著

 

shikataeunita.hatenablog.com