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三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

女の子との2ショットの撮り方~『ペンギン・ハイウェイ』~

 世界一滞空時間の長い紙ヒコーキは、29.7秒飛んだらしい。4月のある晴れた日曜日、私は女の子を誘って広い公園に来た。「世界一飛ぶヒコーキを作ろう」という、ちびっこ向けイベントのための事前テストだ。

 私たちが飛ばす場所を探していると、公園の端っこに小学校一年生くらいの男の子を見つけた。グローブとボールを持ってポツンと立っている。

 女の子が「あの子、一人ぼっちなのかな」とつぶやく。これはチャンスである。男の子とキャッチボールをして、世界一飛ぶヒコーキのつくり方を教えてあげる姿を女の子に見せつけるのだ。これでなかなか振り向いてくれない女の子も私に惚れるに違いない。

 私は男の子に話しかけ、紙ヒコーキを飛ばし、キャッチボールをしてあげた。もちろん女の子のためだ。

 ただ男の子――名前をキョウガ君といった――とキャッチボールをしていると、普通に楽しくなってしまった。私は野球初心者のキョウガ君にボールの取り方を教えてあげた。

 ひとしきりキャッチボールと終えると、キョウガ君は常に持ち歩いているという図鑑を見せながら「宇宙のしくみ」について教えてくれた。小一で図鑑を持ち歩く利発な少年など、小説『ペンギン・ハイウェイ』の主人公くらいしか知らない。

 そんなこんなで30分くらい遊んだ私は、女の子をほったらかしていたことに気が付いた。やっべーと思い、キョウガ君と女の子にもとに駆け寄る。

 携帯を見ていた女の子がこっちを見る。ちょっと怒っている気もする。キョウガ君が唐突に「写真撮ってあげようか?」と言う。

 ファインプレーだぜ少年。突然の申し出に女の子は笑い出したし、私は女の子との2ショットを手に入れられる。忖度が半端ないぞ。

 キョウガ君が写真を撮ると、5時のチャイムが鳴った。門限があるキョウガ君はそのまま帰っていった。手には私のあげた紙ヒコーキが握られている。

 ちびっこと接する機会の多い仕事柄子どもは好きだ。が、盲目的に愛してはいない。良いところもあれば、悪いところだって子どもにはある。

 ただ、彼はきっといい青年になる。

 私はそんなことを考え、そんな私の横顔を、女の子が「素敵」と感じてくれないかしらん、と強く願った。

 そしてそれ以上に、このブログの人、女の子にモテたい話を書いているけど子ども好きなんだわ、と黒髪の乙女がキュンとしてくれないかなと祈る。

 ちなみに、世界一滞空時間が長い紙ヒコーキのつくり方は「世界一 滞空時間 紙ヒコーキ」で検索したら出てきます。ちびっこ喜びますよー。

 

ペンギン・ハイウェイ森見登美彦/著