三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『怒り』〜モテそうなのにね裁判〜

「モテそうだよね」と、一時期女の子に言われていたことがある。当時まだ亜門さんと仲良くなる前だった私は、普通に褒め言葉として受け取っていた。だが、いくらかの経験を経て、褒め言葉ではないと気づく。

 私はそれが「でも、モテそうだよね」という、一種の含みのある表現だということ、そして「モテそうなのにね」につながっていくことを知ってしまった。だから同じく「モテそうなのにね」と言われていたソラマメ先輩(マメさん)と2人で話し合うことにした。「第1回 モテそうなのにね裁判」だ。脳内被告は女の子どもである。

 長期戦を覚悟していたが、開始1分のマメさんの一言で見事にこちらが勝訴する。

「時々さ、女の子に『モテそうだよね』って言われるけど、『じゃあ俺と付き合えんのか』ってなったら絶対にノーなんだよな。だからあの言葉は女の子のミスなんだ。そこに対しての反論は認めねぇぜ。だって現に俺たちはモテてないじゃあないか」

 ーーそう、我々は確かに勝利した。だが、それ以上にひどくダメージを受けた。だって「モテそうだよね、私はムリだけど」という結論に自分たちで辿り着いてしまったのだから。そして、でも他の女の子にならモテるかもしれないのだとしたら、今こうして話し合いが行われているはずがないのだから。

 人生には、真実を知らない方がよかったことが沢山ある。小説『怒り』に出てきた登場人物たちは、本当に真実を知って幸せだったのだろうか。『怒り』は本当に素晴らしい作品なのですが、内容的に救いも少ないし、かなり自分自身が擦り切るので、ふざけたブログのあとに紹介しました。とびっきり面白くはあるけれど、それ相応の覚悟で読んだ方がいいと思います。映画よりも、原作の方がラストが苦しいです。ただ、それを上回る面白さを僕は感じました。

 裁判や法では裁くことのできない、人間的な「怒り」が描かれた素晴らしい作品です。

 がっつり本の紹介をすることで、前半の「結果モテない」のくだりを薄れさせてみた。ソラマメ先輩は結婚したと聞く。彼はもう「モテそうなのにね」を卒業したのだろう。

 しかし何故だ。私は最近「モテそうなのにね」すら言われない。

 

『怒り』吉田修一/著 2016年 映画化

亜門さんについてはこちら↓

shikataeunita.hatenablog.com


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