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三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』

読書男子 恋愛 モテる

 学生時代のとある冬、朝目覚めるのとほぼ同時に、女友達からこんなメールがきたことがあった。
「今すぐ共同玄関のロビーに来てください、早く!」

 ねぼけまなこの僕がとぼとぼと共同玄関に行くと、 そこには何やら小さな箱と紙が置いてあった。紙には 「リツコちゃんと一緒に食べてね、ハッピーバレンタイン。うさぎのおじさん(54)より」と書いてあり、 僕はそこで初めて「ああそうか、今日はバレンタインだった」と気づくという神がかり的に贅沢な出来事を体験した。
 ちなみにリツコとは僕の母親の名前である。

 女友達に「ありがとう」的なメールを送ると、「何が?」的なメールが返ってきた。
どうやらあくまで“うさぎのおじさん(54)”の仕業にしたがっているようで、僕はここでつっこむのは野暮だと感じ、素直に彼女の粋な計らいに乗った。

 んでも、ほんの一瞬だけこうもおもった。
 これってあの子だからかわいく感じるが、もしこれを男がやってたらキモくないか。

 例えば僕が女友達に
「つとむくんにつけてもらってね。あいがものかあさん(39)より」という手紙と一緒になにやらブレスレット的なものを玄関前に置くとすると、これ絶対キモくないか?おそらく、いや、まちがいなく、きもい。

 どうやらこの世には女の子どもはゆるされて、男がしたらアウトなことが沢山あるらしい。一人映画<一人クレープ<<一人日傘といったぐあいにいっぱいあるらしい。

 月明かりの晩に、間接照明とジャズをお供にしながら一人夢想していた僕が、こんなことを思っていると、殆んど1年ぶりにその女の子からメールがきた。

「わたし、結婚します」

 どうやら彼女のもとには本物の“うさぎのおじさん(20代後半)”がやってきてくれたようだ。幸せになってほしいものです。