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三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『恋文の技術』~告白を成功させる待ち合わせの方法~

 昔、テレビの街頭インタビューで「待ち合わせのとき、男の人にどんな座り方でいられたらキュンとしますか」という、今書いていても嘘なんじゃないかと思うような謎の質問があった。

 選択式ではなかったのに、女子から圧倒的に人気の座り方があった。それは、足をちょいと開き肘を膝に乗せる待ち方だった。つまりこれだ。

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 疑う男子諸君もいるかもしれない。でも聞いてほしい、

 何を隠そうこの私こそ、昔この方法で女の子に告白し「保留」という快挙を成し遂げたことがあるのだ。

 てなことを先日急に思い出した。思い出した日は学生時代の女友達と久しぶりの再会の日だった。本人たちの気持ちはさておき、第三者が見たら完全にデートだ。私は張り切った。

 前日の夜、お店選びや待ち合わせ場所などを華麗かつ流麗にサクサク(女の子の意見を取り入れながら)決める私に、女の子は電話越しに「頼りになるぅ、頼りになるぅ」ばかり連呼していた。

「学生時代の女友達との再会」。何かあっても全く不思議ではない。いや寧ろ、そこから恋が芽生え遂には結婚……というのは、王道の部類だろう。

 夕方6時50分。私は例の座り方で女の子を待った。自分なりにアレンジを加える。あの座り方で本を読んでみよう。その女の子は本が好きだからこれで最強だ。

 夜7時。本に熱中し、だんだんと周囲の雑音は消えていくなかで、私は聞き覚えのある女の子の声を聞いた。

 顔をあげると、女の子が爆笑しながら立っていた。

「こんなところでなんで本読んでるの」と爆笑しながら言う。

 周りを見渡してみある。私は人通りの多すぎる繁華街の植え込みに座り本を読んでいた。外套の明かりは頼りなく、本など読めないほど夜に包まれていた。

 女の子が私が読んでいた本をひょいと手に取り、また爆笑する。

「なんで『恋文の技術』なんか読んでるの? モテたいの?」と爆笑する。

 違うんだ、それは恋文の指南書じゃなくて普通の小説なんだ。

 言いたい、ちゃんと訂正してしまいたい。が、もはや何もかも手遅れだろう。

私はグーグル先生に頼りながら女の子をおいしい店まで案内する。

 翌日、モテ師匠である亜門さんに連絡すると、「たかしさ、TPOって言葉知ってる?」と言われた。その通りだと私は思った。

 

『恋文の技術』森見登美彦/著 書簡体小説