読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『神様のボート』~事実には簡単に行きつくが、真実にはなかなか到達しえない~

※知的です。

 私は男と2人でラブホテルに行ったことがある。事実そうなのだが、真実はそこから想像されるものとは少し違う。

 あるとき、友達(男女)4人で飲んでいた。宿泊予定のホテルに手違いで泊まれなくなったこと、その日は入試か何かで他のホテルが全て埋まっていたことが原因で、ラブホテルしか空いていなかった。そこで男ペアと女の子ペアに分かれてホテルに入った。だから「私は男と2人でラブホテルの部屋に入ったことがある」。これが真実だ。でもまだ続きがある。

 男と2人でくつろいでいると、従業員から電話があった。男と2人で泊まらないでください。一緒に来た女性2人とペアになってください、という。同様の電話が女の子の部屋にも来たらしい。同性愛者だったらどうするんだこの時代遅れめ。という文句はさておき、やっと見つけたホテルを追い出されたくはない。女の子はしぶしぶ、私はわくわくして部屋を変わった。

 だから結果として、僕は付き合っていない女の子とラブホテルに泊まったことがある。将来的に彼女ができたとして「付き合ってもない女の子とラブホテル泊まったことがある?」と聞かれたら、事実としてはYESだ。彼女の質問のニュアンスは別として。もちろんその女の子とは何もなかった。キングサイズのベッドの端と端で寝た。紳士ぶるので。

 翌朝、ホテルを出て4人で歩く。前を女の子2人、後ろを男2人で歩いていた。多分気づいていないと思うのだが、女の子の人に知られたくないこそこそ話はほぼ相手に聞こえている。もう1つの部屋に泊まった女の子の声が聞こえる。

「ねぇ、昨日の夜どうだった?」

「ぐっすり寝てたよ」

「えー、たかしくんは何もしてこなかったの? すごいね」

 私は隣を歩く男を見つめる。じゃあお前は何かしたってのか。たかしくん「は」何も……と言ったぞ。お前らにはおみだらがあったのか? 紳士面している場合じゃなかった。

 すました顔をしながら歩く男を見るが、表情からは何もわからない。

 その男が女の子と2人でホテルに泊まったのは事実。だがそこから先の「真実」はわからない。

 だから小説『神様のボート』の真実はわからない。あの女性がある人と会ったのは事実。しかし「それがどんな形か」という真実はわからない。

 事実には簡単に行きつくが、真実にはなかなか到達しえない。

ーーおみだらはあったのだろうか?  私は男からきた年賀状を読み返しながら不毛なヒント探しをする。

 

『神様のボート』江國香織/著 2013年 ドラマ化


本・書籍ランキングへ
にほんブログ村