三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『とにかくうちに帰ります』~合コンの作法~

 合コンには作法がある、と3回目で気づいた。私は過去4回、合コンに行ったことがある。一度目は25歳の時、あとの3回は26歳の時でそれ以来行っていない。単純に自分には向いていないと気づいたからだ。とにかくその3回目の合コンで、私は「合コンの作法」に気づいてしまった。それは「最初に真ん中の席に座ったら時点でそく試合終了」ということだ。

 過去2回では“違和感”でしかなかった。どうして皆は真ん中の席に座りたがらないのだろう。特に男は端っこに座りたがる。職場の先輩に連れられていた私は何も考えず真ん中に座る。そしてなぜだか会話に加われない。先輩とは仲が良かったし、女の子もやさしい。なのにいつもの4割くらいしか会話に入れない。

 3回目で確信する。話し上手な男が必ず両端に座っているのだ。私が行った合コンは割と人数が多いらしかった(9人くらい)。両サイドに話し上手がいると、真ん中の人間はどちらの会話に加わっていいのかわからない。しかも、騒がしい店内では端っこの声が聞き取りにくい。たまに話を振ってもらっても「#※%&がさぁー、*?$&だよなー」としか聞こえないので薄く微笑むしかできない。

 何とか体だけどちらかに向けて楽しむふりをするが全然楽しくない。私は右の会話にも左の会話にも参加しきれず、ひたすら薄く微笑んでいた。おかげで目の前にあったポスター「カニ料理日本一 大収穫祭」の文字はゲシュタルト崩壊するほど読み込んだ。

 どんな物事も情報収集が大切だ。情報(知識)を持っている人間はやはり強い。先輩には悪いがここは戦場。負けたままでは終われない。

 4回目、最後の合コンで私は隅っこに座った。話し上手な先輩が真ん中に座る。満を持して臨んだが、何故だか会話に入れない。そこでようやく思い知る。単純に私のコミュニケーション能力不足なのだと。甲斐甲斐しく空いた皿を下げながら何とか役割を見つけ粛々とまっとうする。そして空いたグラスを見つめて一人つぶやく。「とにかくうちに帰ります」。

 小説『とにかくうちに帰ります』を書いた津村記久子さんは主に仕事関係の小説を書いている。短編集の本作の第一話も『職場の作法』だ。どんでん返しよりも、機微を大切にするので、とてもリアルだ。

 ちなみに、そのお喋り上手な男たちが実際にモテたのかというと、それはまた別の話。合コンは奥が深い。

 

『とにかくうちに帰ります』津村記久子/著