三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

【おすすめ映画⑤】チェスターコートの罠

 やってしまった。オシャレをしてしまった。とんだミステイクだ。私は大都会の大通りで立ち止まる。通行人が迷惑そうにこっちを見てくる。だかそれどころではない、私は間違って“オシャレ”をしてしまったのだから。

 その日の格好は、白のセーターにベージュのチェスターコート、黒のズボンに白靴下、そして黒のデッキシューズだ。

 想像してもらうと、少しオシャレ野郎に見えるかもしれない。しかしこの格好にはオシャレの罠が集約している。

「普通っぽい格好なのによく見たらかわいい」はハードルが低い。基本普通っぽい格好なのだから。だが、オシャレをしてしまったら本当にオシャレじゃないと逆にダサい。

 白セーターに白靴下にチェスターコートなど誰でも思いつくようで、私と同じ格好の人がわんさかいる。しかもここは大都会。もうほぼ全員同じ格好をしている。もし万が一疑う人がいたのなら街にくり出してほしい。チェスターコートを着ているひとはほぼ白セーターだ。しかも白靴下か白い靴を履いている!

 大都会で思った。家に帰りたい。でもここから家に帰るには駅まで歩いて地下鉄に乗って新幹線に乗って電車を乗り換えないと帰れない。恥ずかしい。だからオシャレはしないと決めていたのに。

 今日は私がスキルアップのために通っている学校がある。サボるなどもってのほかだ。私はせめてチェスターコートを脱いで、受講生が7人のクラスに入った。7人中4人が白セーターだった。

 4人は目を合わせ、全員下を向く。先生が「今日はみなさんなんだか静かね」と言った。

 ーー帰りの電車の中で小説『下妻物語』を読む。ロリータとヤンキーの話だ。映画を30回は観て、小説を読みたくなったのだ。あの主人公2人のように、自分のファッションを貫けたらいいよな。貫きすぎだけど。

 映画のラストが大好きで、イチコと桃子の会話のくだりは今でもそらで言える。おちゃらけた『下妻物語』と、同じ監督の『告白』『渇き。』の振り幅が凄すぎるので、見比べてたら面白いと思います。

 後日、この日着ていた写真をアップするために友人にアポを取り、着替えを持って出かけ、撮影後5分で着替えた。心優しき友人は「『あっ、このブログの人なんだかんだでオシャレなのね、素敵〜』って女の子に思われたいだけだろ」とマジで呆れていた。

 あらゆる加工を施したそのモテ写真はブログにアップされることなく、インスタグラムの世界をさまよっている。

 って書いたらなぜか削除したはずの写真が人によっては見れるらしいことがわかる。怖い。ネットは怖い。削除したい……

 

下妻物語嶽本野ばら/著 2004年 映画化