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三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『変身』~二重まぶたになる方法〜

「整形した?」と久しぶりに会った女の子に言われた。「してないよ」と私が言うと、しばらくして「というか整形したよね?」と聞いてくる。私は定期的に人から――それも決まって女の子から――「整形した?」と聞かれる。

 別にどっちでもいいのだが、整形はしていない。聞かれる理由としては多分2つある。一つは体重変化がもろ顔に出ること、そしてもう一つは、26歳の時に二重になったことだ。

 たまにテレビでアイドルが「整形してないですよー、二重になったんです」と言っているのを聞くが、あの中には(おそらく)本当に自然と二重になった人もいると思う。

 とにかく26歳のある朝、なにか気がかりな夢から目をさますと、突然二重になっていたのだ。

 仕事には支障がなかったし、二重は悪いことでもないので特に気にしなかった。そんなある日のこと。

 私はいつものように職場に向かった。殆んど全員が女性であるその職場に行き始めて3年が過ぎていた。

「たかしさんおはよう!」

 と、いつもなら元気にあいさつをしてくる一番仲の良い女性同僚が思いつめた顔をしている。

「どうかしたんですか?」と聞いても「どうもしていません」という。でも明らかにSOSを発信している。

 “同僚”と書いたが、立場的には私が上司だ。いくら女性が仲の良い年上だとはいえ、職場はなれあいの場ではない。部下の悩みを知り、コミュニケーションを大事にすることがチームで動くこの職場では絶対不可欠。そしてそれこそが上司である私の役目だ。

 私は声にならないSOSを発信しているその女性に寄り添い、根気強く言葉を待った。やがて女性はその重い口を開いた。

「1年くらい前からずっと気になっていたんですけど、たかしさん整形しましたよね?」

「してません」

 半ばキレ気味で言った。後にも先にも私が職場で感情的に言い放ったのはその時だけだった。

 私の発言を聞いた女性は大いに満足し、皆に報告してまわった。

「よかったー、たかしさんは整形していませんでしたよー」と報告してまわった。

 おかげでそれ以来皆と少し仲良くなった。女性全員が気になっていたようなのだが、デリケートな部分過ぎて聞けなかったらしい。コミュニケーションを大事にすることが、チームで動くこの職場では絶対不可欠だ。

 小説『変身』では誰も整形しない。主人公であるグレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっていたという話だ。100年前の本だからかっこつけて読んだのを覚えている。でも100ページ足らずなので、外国の昔の本にしたらかなり読みやすい、と外国文学もしっかり読んでいるところをアピールする。

 

『変身』フランツ・カフカ/著


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