三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『つよがり』〜最強音楽プレイリスト「しっぽり」〜

 急に姉とその友達(女性)を居酒屋に送ることになった。お願いをされてから女性が家に来るまで5分もない。「突発的なときにこそ男の真価が問われる」と亜門さんも言っていた。

 女性が来る前に、15メートルほど先の駐車場に車を取りに行く。車に乗り込んだ直後、姉が手を振るのが見えた。隣には早くきたらしい女性もいて、気づいて5秒で2人は乗る。しかしそこは出来る男。この程度のハプニングには動じない。初対面の女性ならなおさらだ。私の評価はすなわち姉の評価にもなるのだから。

 姉よ、安心してよい。私には密かに自信がある。女性が乗り込む刹那、BGMを夜にぴったりな自作プレイリストに変更しておいた。 プレイリスト名は「しっぽり」。84曲に渡るそのプレイリストには、私の音楽センスそのものが詰まっている。

 大丈夫、大音量にはしない。後部座席にちょっとだけ聴こえるくらいにするよ。「曲は聴いたことないけどグッドなリドゥムね」と思わせ、会話に邪魔にならない程度にこっそり流し姉の株を上げるよ。「俺の曲どうだ!」は嫌われるのは知ってるからね。

 「宮内優里」で攻めようか?  少し年上ということは「サニーデイ・サービス」かも。「toe」や「フィッシュマンズ」もいい。「レキシ」の曲は『最後の将軍』だけ入れてたな。いや、あえて「はっぴいえんど」でいくか。まぁどのみち、プレイリスト内は全て夜に適した名曲ばかりだからなんでもいいな。

 私はゼロにしてあったBGMのボリュームを上げる。流れてきたのは皆大好き「Mr.Children」の『つよがり』だった。こんなこったろうと思った。

いや、名曲なのだ、名曲ではあるのだ。問題は、なぜ今、このタイミングで、ということだ。ミスチルは普通すぎる。

もっとこう、「毛皮のマリーズ」とか「田中茉裕」とかの隠れた名曲があるだろう。これじゃあただの“懐かしの名曲”じゃないか。ただのミスチル好きと思われるじゃないか。私は2人にバレないよう、そっとボリュームを下げる。

 2人を降ろしたあと、自分の不幸を呪った。84曲もあるなかで、ミスチルが流れてきた不運を呪った。

 帰路につきながら、プレイリストのボリュームを上げてみる。

森山直太朗」の『高校3年生』が聴こえる……。

 普通だ。とびっきりの名曲だけど、「直太朗」じゃあない。どっちにしろ私は負けていたのだ。そして1番の敗因は、ミスチルに気づいたのにボリュームをゼロにしたら怪しまれるからこっそりボリュームを1だけ残した、自分自身のこざかしさなのだろう。

直太朗を聴きながら、「でも直太朗のも凄くいい曲だもん」と、“つよがり”を言ってみる。

 

『つよがり』Mr.Children

亜門さんについてはこちら↓

shikataeunita.hatenablog.com