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三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『男の作法』モテの極み~モテ師匠~

 過去25回のブログで、私のモテエピソードを紹介してきたわけだが、今回はそんな私のモテ師匠である亜門さん(男)について書きたいと思う。

 家でだらだらしていたときの話だ。まだ二十歳そこそこの私は何の気なしに亜門さんにこう質問した。

「亜門さんて今まで何人に告白されたんですか」

 180センチの身長、整った顔、堪能な英会話、万人受けするファッション、そして優しさ。既に「モテる男」の名をほしいままにしていた亜門さんに対する好奇心だった。

 亜門さんはカラッと笑い、数えてないよ、と言った。それは2日間で5人に告白された女の子が、別の女友達に「あの時マジでめんどくさかった」と言い放ったとき以上の衝撃だった。しかし、凄くはあるが、「数えていない」という言葉にはどこか不誠実さが潜む。私はそのニュアンスを込め、数えていないんですか? と聞いた。

 亜門さんは笑いながら「というか、例えば3人に告白されたとして、『よっしゃ、これで3人目だぜ』って言う男って嫌だろ」と言い、「でも、告白してきてくれた子は全員覚えているよ」と続けた。フォローがイケメン。よし、明日から亜門さんと交換日記だ。

 一応数えてみてください、とお願いする。数が30人を超えた時点で私はストップをかけ、彼のことを「師匠」と呼び始めた。

 師匠は男連中といる時、「男に生まれた以上は七つの海の女を抱きたい」とよく言っていたが、一度も浮ついた気を起こしたことがなかった。2人になった時に訳を聞くと、「いや、彼女を悲しませたら駄目だろ」とさらっと言う。あんなにモテるのに彼女に一途な男。初デートは水族館がいいな。

 素朴な疑問が出てくる。師匠は女友達とは健全に遊ぶ(もちろん男女含めた数人と、あくまで友人として)が、女の子と二人きりでデートをしているところを見たことがない。では、どうやって30人もの女の子に告白されたのか。入り込む余地がないはずなのだ。もしかしたら、私の知らないところで遊びまくっているのかもしれない。

 師匠は言った。「気のない女の子とはそもそも二人きりでは会わないよ。3回ぐらいデートして満を持して告白してくれたのに振る、っていうのは失礼すぎるだろ。それは『女の子と遊ぶ』じゃなくて『女の子で遊ぶ』だ。そんな真似できねぇだろ」

 じゃあ今まで告白してきた子は突発的なの? この野郎。初キスは夜景の見えるあの丘でね。 

 私は師匠に心酔した。だから師匠から「谷川俊太郎の講演会に行かない?」と誘われたとき二つ返事で了承した。この人、詩人にすら造詣が深いのか。

 当日は、高校生4名が谷川俊太郎さんに質問をするという内容だった。1人、とても利発な少年がいて、彼はその利発さゆえに高校生活に少し疑問を抱いているようだった。

 講演が終わり、谷川さんのサイン待ちをしているときに高校生4名の姿が見えた。ちょっと用事がある、と言って師匠が列から離れた。目で追うと、あの利発な少年と話している。少し経ってこちらに戻ってきた。

「どうかしたんですか?」と聞いてみる。

 師匠は「なんか生きにくそうにしてたから、大丈夫って伝えてきた」と言った。

「俺も高校になじめなくて、すぐに辞ちまったからなんだかほっとけなくて」と言った。

 イケメン過ぎる。イケメン過ぎるよ師匠。今夜は抱かれてもいい。

 師匠は元ヤンではない。他者をイジメる人間でもない。むしろそれを止める男だ。だから多分、あまりに利発すぎて「教師や生徒が勝手に作り上げた高校生活での生きるすべ」になじめなかったのだ。いや、なじみたくなかったのだ。ストーリーすらイケメン。

 そして大検を受け、誰もが羨む職場に就職し、今では素敵な奥さんと子供がいる。

 負けた……。男としてではない、生物として負けた。

 私は男性から異常にモテる(下記ブログ参照)。今のところ貞操はまだ守っている。師匠は異性愛者(奥さん一筋)だが、いつの日か、私が男に抱かれる日が来るのだとしら、迷わず師匠に頼みたい。そしたら師匠はあのいつもの弾けるような笑顔で「いや、嫁ちゃんは裏切れねぇよ」と笑うのだろう。

 モテる男とはモテようとしない。生き方(美学)そのものがモテるのだ。

  

『男の作法』池波正太郎/著

shikataeunita.hatenablog.com


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