三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『コルセット』~あなたは昔の出来事をどれだけ覚えていますか?~

何の変哲もない1枚の写真がある。写っているのは葉の落ちた4本の木だ。でも僕にとってはとても思い入れのある写真なのだ。4年住んだアパートの小窓から毎日見ていた風景なのだから。 4本ならぶ木の、右から2番目の形が特徴的でよくその絵を描いていた。…

『ハーメルンの笛吹き男』~もらいシャボン~

ある晴れた日曜日。私はほとほと困り果てていた。公園に連れて行ったちびたちがあるものに夢中で帰ろうとしないのだ。公園に着いてかれこれ2時間半になる。4歳と2歳のちびたちは、見知らぬ女の子(10歳くらい)が吹くシャボン玉の虜だった。 女の子から…

『男の作法』モテの極み~モテ師匠~

過去25回のブログで、私のモテエピソードを紹介してきたわけだが、今回はそんな私のモテ師匠である亜門さん(男)について書きたいと思う。 家でだらだらしていたときの話だ。まだ二十歳そこそこの私は何の気なしに亜門さんにこう質問した。 「亜門さんて今…

【おすすめ映画④】アメリカよ、これが日本だ!

アメリカ大使館が、日本の大人気ドラマのエンディングで流れるダンス(逃げ恥ダンス)を踊り、YouTubeに投稿した。 私が「さすがアメリカは洒落てんなー」と言うと、友人が「今から日本が同じことをしても二番煎じになるからダメかもね。最初にやるから意味…

『トリツカレ男』〜49.9〜

誰しも何かに悩んでいる。悩みは個別的なものなので、人と比べて卑下したり、あるいは憤る必要はないだろう。もしあなたの友人が悩みを打ち明けてきたら、きっとあなたは彼ーーあるいは彼女ーーに寄り添うはずだ。だが、その中で唯一、相手を敵に回す悩み相…

【おすすめ映画③】12月25日の朝。

朝目覚めると、熱は大分引いていた。前日はクリスマスイブだったというのに38度の高熱で寝込んでいたのだ。もう何年も前の話になる。 12月25日の朝。僕は卒論をするためにいつもの学食(の踊り場みたいなところ)へ向かった。よく友人と3人で勉強をし…

『雨があがるようにしずかに死んでゆこう』(第2回 スタパで恋は生まれるのか)

2014年。スタバ。私は友人と真剣に語り合っていた。当初は八木重吉の詩集『雨があがるようにしずかに死んでゆこう』の素晴らしさについて話していたはずなのだが、いつの間にか、「どうして俺たちはモテないのか」に話がすり替わっていた。すり替えたの…

『檸檬』~「城のある町にて」~

――ほんの些細なことがその日の幸福を左右する――とは、確か小説『檸檬』を収録した短編集に書かれていたように思う。その本を読んでから、私は毎日丁寧に暮らそうと決めた。 やっていることはシンプルだ。寝る直前に間接照明を消し、メガネをコトリと置き、ス…

『麦の海に沈む果実』~光源氏計画~

15歳の女子高生はおずおずと車に乗ってきた。激しい雨の日だった。仕事を終えた私は図書館を施錠しようとしていた。5分ほど前に退社したはずの女性同僚が、裏口から出た私のもとに駆け寄ってくる。 「たかしさん。女子高生が図書館の自動ドア前に立ってい…

『自分をいかして生きる』

花を一輪、女性に贈った。確か赤のガーベラだったと思う。花言葉は「チャレンジ」。これから退院する彼女は一人暮らしに挑戦しなければならない。応援の意味も込めて選んだが、ガーベラは花言葉が沢山あるし、花言葉を調べられても邪推――と言ったら失礼だが…

『キッチン』

青豆ごはんは食べたことがなかった。 それどころか青豆を「あおまめ」と読むのか、それとも小豆(あずき)みたいに固有の読み方があるのかさえしらなかった。 もともと食に頓着のない私は、食べるものにももちろん無頓着。「毎日の食事であなたの身体はでき…

『とべバッタ』〜パンツが見たい〜

こんな話がある。 くさむらに、一匹のバッタがいた。まわりにはカマキリや蜘蛛、カエルなどが沢山いて、バッタは食べられないようにいつもこそこそ暮らしていた。でもある日、そんな自分がいやになった。バッタは大きな岩の上によじ登り、大胆にも日向ぼっこ…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(第1回 スタパで恋は生まれるのか)

スタバという、いわゆるモテ男女が好む場所に行ってみた。私は生粋のタリーズ派なのだが、引っ越した家のすぐ近くにスタバがあったのだ。しかし私はカフェインが割と苦手。大量に摂取すると夜眠れなくなる。 初めてお店に行ったときカウンターにいたのはボー…

『沈黙』

第3ボタンまで開ける彼のことは、割と早い段階で気づいていた。当然といえば当然で、彼はテニスサークルの後輩だった。 知らない方も多いと思うが、テニスウェアのボタンは3つある。男は大抵1つ、暑い時は2つ開けていた(僕は「逆にカッコいい」という、…

【おすすめ映画②】大人の男女は目で語る

一時期、クリント・イーストウッド作品にはまっていた。『マディソン郡の橋』は、写真家の旅人(イーストウッド)と孤独を抱えた主婦(メリル・ストリープ)の不倫を描いた話だ。メリル・ストリープも大好きだった私は、迷わずツタヤで借りた。素晴らしかっ…

『そして生活はつづく』〜僕は平匡さんにはなれない〜

4年前、僕は平匡はんになりたかった。矛盾しているのはわかっている。4年前はまだ『逃げ恥』は放送されていない。でも、それが最も正確な表現だ。僕のなかでは少し――いや、かなり違うが、「星野源になりたかった」と言えば、ちょっとは理解してもらいやす…

『レヴォリューションNO.3』〜読書男子はモテるのか〜

昨今、読書男子なるものがモテるらしい。ただしイケメンに限る、という但し書き抜きで。それがもし本当なら大変なチャンスだ。本が好き過ぎて、司書になったのだから。私は早速、グーグルで「読書男子 モテる」と検索した(検索する時点でモテないよ、という…

『斜陽(しゃよう)』

ーー私の恋をしている人の身のまわりの雰囲気に、私の匂いがみじんも染み込んでいないーー とは、太宰治の『斜陽』のさして有名でもない一文だが、大抵の場合、人はそれぞれに誰かの匂い(影響)を体に染み込ませているように思う。 「影響」という言葉のも…

『女のいない男たち』~ドライブ・マイ・カー~

国道を一台の車が走っている。2007年式の4WD。辺りはもうすっかり夜だ。男と女が乗っていた。女はクラシックに耳を傾けている。男は、男の顔面は蒼白で、冬だというのにびっしり汗をかいていた――私だ。私はとにかく焦っていた。 女の子との食事の帰り…

『人のセックスを笑うな』

セクハラが嫌いだ。犯罪のなかで最も嫌悪していると言っても過言ではない。理由は(誰も俺のセクハラ論など知りたくないだろうから)書かないが、私は働くうえで常にセクハラしないよう意識している。女性から触られるのは良しとしている、念のため。 その前提…

『もしもし、運命の人ですか。』

あなたはどういう時に「この人運命の人だ」と感じますか? と聞かれたら、穂村弘のエッセイを思い出す。 それは穂村さんが女性と住宅街を歩いていると、 不意に女性が頭上の樹を見上げ「ここ昔、森だった?」とつぶやく、というものだ。 穂村さんも、「あん…

勇敢すぎた男

彼と出会ったのは10年以上前のことだ。17歳、私は高校3年生だった。部活動で顔は黒々と光り、ひげはまだ生えていなかった。 その男は男子トイレにいた。正確にはトイレの鏡の中に。私が手を洗い、ふと鏡を見ると、喉仏の隣から一本の毛が生えていた。 …

『昔日の客』

その日、僕はいつものように喫茶店でディカフェを飲んでいた。 ディカフェとはコーヒーからカフェインを抜いたもので、週2で喫茶店に通っている僕は、店員さんから「ディカフェ野郎」と親しまれていると信じている。 さて「ディカフェ野郎」こと私は、古本…

薄毛救済作戦

「あいつは俺の薄毛くらい頼りないからなぁ」 父がまたハゲをネタにした。定期的に冗談に織り交ぜてくるが、その実とても気にしていることは家族全員が知っている。 私に言わせれば父は薄毛ではない。 ハゲかけてもいないし、ハゲてもいない。「ハゲ終わって…

『論理哲学論考』〜一期一会について〜

ホテルで働いているころ、言語学者で思想家でもあるノーム・チョムスキーの息子で、自身もマサチューセッチュ工科大学の教授であるおっさんと話す機会があった。 とはいっても、その胡散臭いおっさんがそう言っただけで、本当のところはわからない ――彼は地…

【おすすめ映画①】忘れなければ、それは起こらなかった

皆さんは昨日の夜10時に何をしていたか覚えていますか。 3日前の晩御飯は。2年前の今日は何がありましたか。 人生はもう覚えてもいない出来事の連続でできています。もしかしたらほんの些細な出来事があなたの人生を決定的に――あるいは致命的に――変えて…

モテるためには、全てを武器にせよ

バーで外国人に口説かれたとき、正直「またか」と思った。 カタコト会話のあと、ぼそっと何かを言われた。周りが騒がしかったので顔を近づけると、耳元で「一緒に、裸で」と言われたのだ。 英国陸軍少尉に「あなたはとても美しい」とささやかれたこともある…

モテ男になろう

「モテ男」になるのは難しい。 先日、女性に「これ開けて」と菓子袋を渡された。私はこっそり手汗を拭き、何とか袋をこじ開ける。冷や汗をかいた。 あるいはこんなこともあった。 私は致命的に方向オンチで、女の子を助手席に乗せるときそれを伝えている。彼…