三十路の図書委員、本棚から覗くモテ世界

30歳、独身、彼女なし。ややイケメン。この「やや」がやっかいだ。昨今、読書男子がモテるというけれど、クラスではドッチボールのうまい男子がモテていた。そんなこと小学生時代からわかってた。

『心を整える。』〜有名人でいうと誰に似てる問題〜

「有名人でいうと誰に似てる?」

 好きな女の子の話をすると聞かれるこれ、もう廃止でいいのではと思うのは私だけだろうか?

 女の子と付き合うたびに聞かれ、なんとなく返してきたけど、私の本当の答えはこうだ。

“特に誰にも似ていない”  そう、特に誰にも似ていなかったのだ。それに、超絶美女の名前を出すと胸がざらっとするし、ざらっとすることへの後ろめたさもある。

 もちろん、付き合った女の子は好きだったし、本当にかわいいと思っていた。ただ、それとこれとは別でしょうに! と感じていたのは確かだ。

 というか、似てる有名人なんてそうそういるものだろうか?

 それが、いるのである。私はサッカーの長谷部選手に猛烈に似ている、らしい。どのくらい似ているかというと、見知らぬ人に「似てますね」と声をかけられる程だ。

 なんと光栄なのだろう。ありがとう日本!

 が、彼は日本代表を引退してしまった。それから、こう言われることが多くなった。「私の親友(男)にめっちゃ似てる」「友達の彼氏にめっちゃ似てる」「地元の友達にめっちゃ似てる」。

ーーそうだった。長谷部があらわれるまで、私はずっと「私と身近な〇〇にめっちゃ似てる」と言われてきたのだった。

 世界には自分にそっくりな人間が3人いるというが、私に似ている人はそこここにいるらしい。一瞬、「量産型」という言葉が浮かんだけど、長谷部ファンから殺されそうでドキドキするからやめておく。

 そうそう、ドキドキといえば明日は波瑠に似てる女の子とデートだ。ドキドキするぜ。ひとまず、長谷部選手の本を読んで心を整えるとしよう。

 

心を整える。長谷部誠/著  2011年

 

『ボッコちゃん』〜1001回やりゃあ、文句あるか、ですよね~

 筋トレには2種類ある。いい筋トレと悪い筋トレだ。

“そこそこ”の筋肉をつけて女の子にモテるため、私は日々、五体を鍛えている。

 いい筋トレは回数ではなく質だ。正しいフォームで腕立てをすると、10回でも十分きつい。たまに「俺、腕立て100回したわ」という男がいるが、あれはあんまり効果がないのです(女の子たちもうちょっとだけついてきてね)。

 ただ、質の高い筋トレは地味で疲れる。100回くらい連続する筋トレは“やった感じ”が出るから気持ちがいい。ただの自慰行為のようなものだとしても。

 日々の筋トレに飽きた私は、自分が気持ちよくなるためだけに、ある日回数をこなすことにした。その数、腕立て伏せ777回。時間をかけて実際にこなし、大満足する。効果は薄いが気持ちがいい。

 にまにましながらテレビをつけると、近頃話題の破天荒なディレクターが無人島で魚をとってた。なんかしらんが不眠不休で小屋を作り魚を取りまくっている。

「限界なんてこんなものじゃない」

 彼の勇姿になぜか勝手に感化された私は決めた。腕立て伏せ1001回しよう。そうしてその日のうちに1001回やりおえた。とんだオナニー野郎である。

 それから、女の子とデートに出かけた。

 喫茶店で女の子に会うやいなや、A子ちゃんに私は言った。

私「今日、腕立て伏せ1001回したよ」

A「1日で?」

私「一日で」

A「……」

私「1001回やりゃあ、文句あるか、だよね」

A「……キモっ」

どうやらオナニーをやりすぎた私は、世間とのギャップをはかり間違えてしまったようだ。ショートショートを人生で1001篇書いた星信一の名言、「1001篇書きゃあ、文句あるか、ですよね」というセリフを引用してみても、私の気持ち悪さは隠しきれなかったようだ。当然である。

 私の腕立て伏せ自慢はさておき、あんな良質のショートショートを1001篇も書いた星信一はやはり化け物だ。

――翌日、目が覚めた私は、全く筋肉痛になっていないことに気づく。お遊びのような回数だけの筋トレの効果は、やはりとっても薄いようである。

 

『ボッコちゃん』星信一/著

 

『あのころ』〜ボタン狩り〜

 女の子に第二ボタンをねだられるのが夢だった。中学生の時は叶わなかったが、高校の卒業式であっけなくかなった。

 たかしくん第二ボタンちょうだい、とクラスメイトの女の子に言われたのだ。隣には付添みたいな女の子もいる。

 私は「べ、べつにいいけど」みたいな顔をしながらボタンをブチっと取り、女の子にあげた。

 すると、付添みたいな女の子が僕を見て、

「ねぇ、第1ボタンちょうだい」と言ってきた。私はまたしても「べつにいいけど」みたいな顔をしてーーそれがかっこいいと思っていたのだーー女の子にボタンをあげた。高校はブレザーだったので、ボタンは二つしかない。私はボタンのなくなった制服を見て大変に満足した。

 さてその後である。なんとその女の子2人組が、別の男にもボタンをねだり始めたのである。彼女たちは私のボタンが欲しかったわけではない。何故だか理由はわからないけれど、男の第二ボタンを収集する“第二ボタンハンター”だったのだ。

 その証拠に、彼女たちは私を含めて計3人の男達から第二ボタンを奪っていた。くそぅ。

 ややあって、意気消沈した私が教室を出ると、ある女の子がもじもじしていた。

 「あの、たかしくん。もじもじ。もしよかったら第二ボタンくれないかな、おずおず」

彼女は、高校二年生のときのバレンタインに、私にチョコをくれた女の子であった。

 その真剣な眼差しから、彼女が本気で私の第二ボタンを欲しがっていることがわかった。やっぴー。

 が、ときすでに遅し。私は2個しかないボタンを第二ボタンハンターに奪われた後であった。とんだバカタレである。

 さくらももこの『あのころ』を読んでいたら、ふとそんなことを思い出した。

 もしあのときボタンを渡せていたら‥‥‥、いや、当時のたかし少年には、第二ボタン狩りから逃れる術はなかったのだろうな。

 

『あのころ』さくらももこ/著